『おいしく食べてもらう』という心が大事

米谷 昇(よねたに?のぼる)

入社44年。釜場を守る熟練職人。松前屋の伝統を守り受け継がれた味を入れ込む。

松前屋に入社したきっかけを教えてください。

もう44年前の話やからなあ(苦笑)。私の母や親戚が元々松前屋で働いていてそれがきっかけで自分もここに来ました。

凄い縁ですね!

そうやねえ。それから44年。あっという間でした。

仕事内容を教えてください。

釜場を守っています。入社して半年は違う持ち場でしたが、その後ずっと釜場で仕事をしています。かれこれ40年が経ちますね。釜場では前過程のつけ前を終えた昆布に調味料を加え、味を入れ込み、火加減を調整し、煮炊きしていきます。その途中、何度か手入れ(攪拌作業)をし、昆布のもちもち感や、うま味を出していきます。

伝統の味を守っていくというのは苦労もあるんでしょうね?

松前屋の昆布は原藻が北海道道南の白口浜産天然真昆布で最上級のものを使用していますが、それでも出来がいつも同じではないですし、気温や湿度で、また変わってきます。そこを察知して釜場はブレることなく、味を入れ込んでいかなくてはならないのでそこは経験がいります。手入れも単に混ぜるのではなく、(釜の上の昆布も下の昆布も)商品を均一にしていかなくてはならないので、それも簡単そうに見えて案外むつかしいものです。

技術の習得は大変そうですね。

私らの場合、見て覚えたり、先輩の職人が教えてくれたり、そういう経験を積んできました。味や作業の仕方は現場で覚え、後は職人としての勘を大事にしてきました。でも、これでは継承できないですよね?だから今は皆がわかるように数値化できる所は数値化していっています。

数値化?ですか?

はい。いろいろなことを数値化することで、それが1つの基準となります。味のことだけではなく、今、色んな所で問題視されている、食品安全の問題も数値化することでクリアできることが多くあります。また各部門との共通認識としても数値化をはかることで利点があります。

数値でわかれば一目瞭然ですものね。

数値化は後継者の育成にも役立ちます。僕らが30年、40年かけて培ったものを同じ時間かけて育成してたんでは、(この時代に)追いつきませんよね。だから基本的なことは早く覚えてもらわないかんし、それには数値という共通語が若い人にもわかりやすいと思います。

ただここで忘れてはいけないのは、数値に表れないものもたくさんあるわけです。その部分で、やはり最後の砦は職人としての勘です。勘は経験によって培われるものなので、そこを忘れてはならない。しっかり経験を積まないといけないと感じるわけです。

なるほど。最後はやはり職人としての熟練度なのですね。

あと、やはりお客様においしく食べてもらう心。これが原点ではないでしょうか?また、歴史と共に、商品数も増えました。求められる味も昔と違うところもあります。職人といえど、世の中の変化に対応できないとこれからはダメだと思います。「おいしさと安全」。「伝統と変化」。この両立を果たせる真の職人を目指し、日頃の作業に心を入れていきたいですね。

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