弊社では、北海道は函館市近海の道南地方で採取される『真昆布』を主原料としております。真昆布のなかでも、特に尾札部・川汲・大船・臼尻・木直・安浦・鹿部という7つの浜から構成される『白口浜』と呼ばれる最高品質の昆布を使いますが、これらは古くから天皇家に献上されます『献上昆布』の産地として有名なところです。『白口』とは、昆布をカットした断面が白く見える昆布のことをさします。すなわち、昆布の外側の黒い部分が薄く、内側の甘い髄の白い部分が肉厚である昆布が産出されるという意味で、『白口浜』と呼ばれ珍重されているのです。
皆さんはご存知でしょうか? 昆布は2年藻だということを・・・。
昆布は秋ごろに胞子が放たれ、これが岩盤に着床して冬場を越し、6月7月に向けてどんどんと大きく育ちます。ただし、1年目の昆布は『水昆布』といわれ、形は大きく立派ではありますが、緑色で薄くて、出汁もあまり出ないものです。1年目の秋になると、昆布は根の部分を残して越冬し、2年目の夏に大きく立派にあめ色をした『成昆布』に成長を遂げます。この2年藻こそが出汁が立派に出るしっかりとした昆布なのです。
松前屋では、白口浜の2年藻の昆布しか使用しません。夏になると担当者が函館の現地に向かい、漁民の方々とその年の作柄を語り合いながら、しっかりとこだわった仕入れを行っています。今年はどこの浜の何等級のものが良き物か、長年にわたる仕入れの情報力と直観力がものを言います。
昨今では養殖技術も進歩しており、研究室で育てられて幼体を2月ごろに海に張ったロープに着装させるやり方が定着してきています。この場合も、その夏に刈り取る1年目の『促成昆布』と、もう一年まわして育てた『2年養殖昆布』とが存在します。この2年養殖の技術は非常に高く、天然昆布にも匹敵するほどのものを産出されるようになって来ています。ただ近年の地球温暖化で2年養殖昆布はダメージを受けることが多くなってきており、ここ数年は産出量が極端に減少してきております。
(海の底の岩盤に根をつける天然昆布とは違い、海面に張ったロープに根をつける養殖昆布は、温暖化の影響を受けやすいとされています。)
こうしてこだわり抜いた最高級の2年藻の『真昆布』。これを煮炊きするにも長年の工夫があります。
長昆布や日高昆布という煮昆布といわれるものは、40分~1時間ほどで煮あがってしまいますが、肉厚の真昆布はその煮炊き時間は3時間~4時間ほどを費やします。しかも、醤油などの調味料の中に解け出た昆布のウマミは、一滴きたりとも逃すわけには行きません。
松前屋では、調味料に染み出た昆布のウマミをすべて昆布に回収する『焚き染め』製法をとっています。昆布を煮炊きした残液を一切製品昆布に回収して入れ込むこの製法は、大阪の塩昆布つくりの伝統的な手法です。煮汁を残さず、焦がすことなく、すべてのウマミを昆布に戻す、これこそが松前屋の秘伝の『焚き染め』製法です。だからふっくらこってり、濃厚な昆布本来の持つウマミの力を食していただけるものと自負しております。